Column院長コラム

睡眠時無呼吸症候群(SAS)はCPAP以外で治る?負担が少ない切らないレーザー治療

2026.03.31

睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome: SAS)は、睡眠中に何度も呼吸が止まったり、極端に浅くなったりする状態が繰り返される疾患です。この状態を放置すると、睡眠中の酸素不足により自律神経や心血管系に負担がかかり、日中の強い眠気や集中力の低下を引き起こすだけでなく、高血圧、心筋梗塞、脳卒中といった合併症のリスクを上昇させることが多くの医学的研究で示されています。

この睡眠時無呼吸症候群に対する世界的な標準治療として広く普及しているのが、CPAP(持続気道陽圧療法:シーパップ)です。CPAPは有効性が高く、適切に使用すれば無呼吸の回数を減らし、健康リスクを低減させることができます。

しかし、実際の臨床現場においては、「毎晩顔にマスクを装着して眠るのが苦しい」「空気が漏れる音が気になってかえって眠れない」「出張や旅行のたびに機器を持ち運ぶのが負担」「一生この治療を続けなければならないのか」といった身体的・心理的な理由から、治療の継続が困難になる患者様が一定数いらっしゃるのが実情です。

CPAPの継続に悩む方や、そもそも機器の装着に強い抵抗感がある方にとって、「CPAP以外の治療法はないのか」「手術なしで気道を広げる方法はないのか」という疑問は、治療方針を見直す上で非常に重要なテーマとなります。

本記事では、睡眠医療に携わる医師の視点から、睡眠時無呼吸症候群のメカニズムとCPAPの役割を整理した上で、CPAP以外の選択肢として近年関心を集めている「切らないレーザー治療」の医学的メカニズム、そして治療を検討する上で必ず知っておくべき適応の限界やデメリットについて客観的に解説します。

睡眠時無呼吸症候群の原因とCPAPの役割

睡眠時無呼吸症候群の大部分は、上気道(鼻腔から喉頭に至る空気の通り道)が物理的に狭くなる、あるいは塞がってしまう「閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)」に分類されます。

人間は睡眠状態に入ると全身の筋肉が弛緩します。特に仰向けで寝ると、重力によって舌根(舌の根元)や軟口蓋(上あごの奥の軟らかい部分)、口蓋垂(のどちんこ)といった組織が喉の奥へと下がりやすくなります。健康な方でも気道は多少狭くなりますが、肥満による気道周辺への脂肪沈着、もともと下顎が小さいといった骨格的特徴、加齢による筋力の低下などが加わると、気道が完全に塞がってしまい、無呼吸が生じます。

CPAP療法は、就寝時に鼻(または鼻と口の両方)にマスクを装着し、本体の機器から適切な圧力の空気を送り込み続けることで、この塞がりがちな気道を空気の圧力で物理的に広げる治療法です。中等症から重症の患者様に対する第一選択とされており、心血管系イベントのリスクを下げます。

しかし、留意すべき点として、CPAPはあくまで「使用している間だけ気道を確保する対症療法」です。肥満の解消などによって根本的な原因が取り除かれない限り、機器の使用を継続することが前提となります。

CPAP以外の従来の治療選択肢とそのハードル

CPAPの継続が難しい場合、あるいは気道の構造に対する別のアプローチを望む場合、これまでは主に以下の2つの選択肢がありました。

1.マウスピース(口腔内装置:OA)

就寝時に専用のマウスピースを装着し、下顎を前方に引き出した状態で固定することで、舌根が奥に落ち込むのを防ぎ気道を広げます。軽症から中等症の患者様に使用されることが多く、CPAPに比べて携帯性に優れています。しかし、長時間の装着によって顎関節に痛みが生じたり、噛み合わせに違和感を覚えたりするケースがあり、重症の方や肥満が強い方には十分な効果が得られにくいという限界があります。

2. 外科的切除手術(UPPPなど)

口蓋垂や軟口蓋の一部をメスで切除し、物理的に気道を広げる手術です。原因となっている組織を取り除くため、構造的なアプローチと言えます。しかし、全身麻酔を必要とすることが多く、術後の数週間にわたる痛みや出血のリスク、長期間の回復期間(ダウンタイム)など、患者様の身体的・社会的負担が大きい点がハードルとなっていました。また、声質の変化などの不可逆的な後遺症のリスクもあります。

負担を抑えた「切らないレーザー治療」のメカニズム

「CPAPの継続は難しいが、外科手術のような痛みを伴う治療や長期間の休職も避けたい」という患者様のニーズに対して、近年、新たな選択肢として広まっているのが「切らないレーザー治療」です。

この治療法は、組織をメスで切り取るのではなく、医療用レーザーの熱エネルギーを利用して粘膜の収縮と再構築を図るアプローチです。

特定の波長を持つレーザーを喉の奥の粘膜(軟口蓋や口蓋垂)に照射すると、表面を過度に傷つけることなく、粘膜下層に約60度から65度程度の熱刺激が加わります。この熱刺激により、組織内のコラーゲン線維が熱収縮を起こし、たるんでいた粘膜が引き締められます。

さらに、熱刺激を受けた組織は創傷治癒のプロセスに入り、数週間から数ヶ月の時間をかけて新たなコラーゲンやエラスチンが作られ、組織のリモデリング(再構築)が行われます。これにより、喉の奥の粘膜が支持され、仰向けになっても気道が塞がりにくくなる状態を目指します。

レーザー治療の特徴は、組織を切除しないため出血がなく、外科手術と比較して術後の痛みが比較的軽微であることです。日帰りで施術が可能であり、術後のダウンタイムも少ないため、日常生活や仕事への影響を抑えやすいという側面を持っています。

レーザー治療の適応の限界と「治る」という言葉の解釈

身体への負担が少ないレーザー治療ですが、睡眠時無呼吸症候群が完全に「治る」治療というわけではありません。検討する際には、以下の適応の限界やデメリットを客観的に把握しておくことが極めて重要です。

1. 複数回の治療が必要である

組織の修復過程を利用する性質上、1回の照射で完了するものではありません。安全に段階的な引き締めを行うため、一般的には3週間から4週間程度の間隔を空けて、3回から6回程度の反復照射が必要となります。一定期間、定期的な通院が必要である点を理解しておく必要があります。

2. 効果は永続的ではない

レーザーによる引き締め効果は、一生涯続くものではありません。加齢に伴う組織の衰えや体重の増加などによって、数年後に再び粘膜がたるみ、無呼吸または低呼吸の症状が後戻りする可能性があります。状態を維持するためには、体重管理などの生活習慣の改善と併せて、将来的なメンテナンス照射が必要になる場合があります。

3. 健康保険が適用されない(自由診療)

現在の日本の医療制度において、いびきや睡眠時無呼吸症候群に対するレーザー治療は健康保険の適用外となり、全額自己負担の自由診療となります。複数回の治療となるとまとまった費用が発生します。
(ただし、医師の診断に基づき疾病の治療目的で行われたと判断された場合、確定申告によって医療費控除の対象となる可能性はありますが、最終的な適用可否は管轄の税務署の判断によります。)

CPAPからの移行・併用を検討する際の重要なステップ

現在CPAPを使用しており、「苦しいからやめたい」と考えている方が、自己判断でCPAPの使用を中止することは医学的に推奨されません。無呼吸状態が再発し、心血管系への負担が再び増加する恐れがあるためです。

CPAP以外の治療を検討する場合、まずは睡眠医療の知識を持つ医師の診察を受けることが不可欠です。ご自身の気道がどの部位で閉塞しているのか、そして無呼吸の重症度はどの程度なのかを客観的に再評価する必要があります。

検査の結果、喉の粘膜のたるみが主な原因であり、レーザー治療の適応となると判断された場合でも、いきなりCPAPを中止するのではなく、CPAPを併用しながらレーザー照射を行い、気道が維持されるかを経過観察していくのが安全です。場合によっては、CPAPを完全に手放すことは難しくても、レーザー治療によって気道が少し広がることで、CPAPの設定圧を下げることができ、マスク着用時の息苦しさや不快感が軽減されるという補助的なメリットが得られることもあります。

当院における診療方針と透明性の確保

エイドクリニック池袋院のいびき外来では、特定の治療法をすべての患者様に画一的に推奨することはいたしません。

事前の問診や視診、各種検査を実施し、患者様の無呼吸の主な原因と重症度を客観的に評価します。診察の結果、レーザー治療で改善が見込めると判断した場合にのみ、治療のメカニズム、期待される効果とその限界、必要な通院回数、起こりうるリスク、そして費用の総額についてご説明します。

もし、CPAPの継続が医学的に不可欠であると判断した場合や、鼻の疾患など別のアプローチが最優先されるべき場合には、その旨を率直にお伝えします。患者様にとって適応とならない自由診療をお勧めすることは医療機関として適切ではないと考えているためです。

おわりに

睡眠時無呼吸症候群は、自覚症状が少ないまま身体にダメージを蓄積させる疾患です。CPAPが合わないからといって治療そのものを中断してしまうことは、将来の健康リスクを考慮すると避けるべき事態です。

CPAPの継続に悩まれている方にとって、メスを使わないレーザー治療は、身体的負担を抑えながら気道の確保を目指す選択肢の一つとなり得ます。しかし、ご自身の症状に対する適応の有無や、複数回の通院が必要であること、費用の問題など、客観的に評価すべきポイントも存在します。

治療法を見直したいとお考えの方は、ご自身の判断で治療を中断する前に、ぜひ一度、専門の医療機関へご相談されることをお勧めします。当院でも、現在の症状に応じてご対応いたします。

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